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2019年版:世界の現金・キャッシュレス動向

3 Dec 2019 ブログ

2019年版:世界の現金・キャッシュレス動向

 

10月に消費税が10%に増税されてから早2ヶ月。
キャッシュレス決済、使っていますか?
ジャストシステムが行った「Eコマース&アプリコマース月次定点調査(2019年10月度)」によりますと、消費税増税後にキャッシュレス決済の利用が1割増加したとのことです。
私自身も、キャッシュレス還元に乗らない手はないと、10月に入ってからPaypayをダウンロードしてスマホ決済に参戦してみました。確かに便利です。
現金を財布から出す手間もなく、ピッ!パッ!と決済できる便利さは素晴らしいと思います。
先日弊社がお伺いした店舗様でも、前年に比べてキャッシュレス支払いが大幅に増えたとのお話を伺いました。
ただし、決済手段のトップが現金であることに変わりはないようです。
キャッシュレス還元を取り入れているお店でも、現金の出入りが極端に少なくなった、ということはないようです。
「ITサービスの本質が『世の中を便利にしていくこと』にあるのだとすれば、これらのキャッシュレス決済に対して無用な抵抗感を持つのではなく、利便性重視で大いに利用すべきではないかと思う」。
経済コラムニストの大木英樹氏は、「ダイヤモンドオンライン」上にてこう述べています。
確かに、便利なものは使うべき、ですが、便利なものと思って使っていたキャッシュレス決済に翳りが見えてきた国もあります。
今月は世界の現金・キャッシュレス関連ニュースを追ってみました。

 

香港の場合

 

香港では、現金と共に交通系ICカードである「オクトパスカード」が広く普及しています。
香港に行ったことのある方ならご存知かと思いますが、オクトパスカードは公共交通機関に乗る際だけでなく、買い物はもちろん、マンションやオフィスの開閉、学校や会社の出席・出社記録にも使用されており、生活していく上で欠かせないカードです。
観光で香港に行く際も、まずはオクトパスカードを入手するようにガイドブックに書いてあります。
そんなオクトパスカードですが、昨今のデモにより、使用が減ってきているようです。
朝日新聞GLOBE+の報道によると、デモ参加者は警察にICカードの利用履歴を把握されることを恐れて、抗議行動に行く際は、匿名性の高い現金を使用するというのです。
キャッシュレス決済では購入情報や個人情報が守られないことへの危惧から、現金回帰の傾向があると朝日新聞GLOBE+は報道しています。
便利だから使いましょう、は平和な日本だからこその発想なのかもしれません。

 

スウェーデンの場合

 

それではキャッシュレス比率が約9割という国、スウェーデンはどうでしょうか。
同国では、2012年に大手銀行11行が共同開発した「スウィッシュ」というスマートフォン用決済アプリにより、キャッシュレス化が進んでいます。
現在、スウェーデン国民の10人中7人がスウィッシュを使用しており、5人に1人はATMを全く利用しないようです。
急速に進むキャッシュレス化を中心に報道がされていますが、やはりキャッシュレス化に取り残されるマイノリティはいます。
キャッシュレスへの移行で、電子機器へのアクセスが難しい年金生活者や障がい者、移民などが取り残され、不利な立場に置かれていることを朝日新聞GLOBE+は報じています
同記事によりますと、パソコンを使用したり、iPhoneやiPadの使用が難しい年金受給者が100万人以上いるとのこと。
デジタル化やキャッシュレス化の進度により影響を受ける人がいるということに、改めて気付かされます。

 

イギリスの場合

 

例にもれず、イギリスでもキャッシュレス化が進んでいます。
キャッシュレス比率は約6割と、約2割の日本と比べるとキャッシュレス比率が非常に高いイギリス。
ATMの撤去や銀行の支店閉鎖が急速に進んでおり、地方を中心に現金へのアクセスが難しくなっているといいます。
この傾向を前に、英国議会では、完全キャッシュレス化にブレーキをかけるべきだという議論が行われています。
2019年3月に発表された「Access to cash review-Final report」は、「現金は商業の問題としてとらえられるべきではなく、イギリスのインフラの中核としてとらえられるべきだ」としてキャッシュレスの傾向に警鐘を鳴らしています。
同調査レポートは、イギリスの人口の17%、800万人以上の成人がキャッシュレス社会への適応に苦慮している事実を指摘し、弱者が取り残されることのないように、政府と産業界が協同で現金を維持していくことを提起しています。

2019年版:世界の現金・キャッシュレス動向

日本におけるキャッシュレスの今後

 

キャッシュレス化が進む中で、様々な弊害も見えてきているようですが、日本はどうでしょうか。
日本では、スマホ決済が乱立しており、クレジットカード、デビットカード、それにポイントカードなど、支払い時にあれを出し、これを伝え、と複雑化してきているのが現状です。
キャッシュレス還元が終わる2020年6月以降は、現金支払いに戻る人も多いのではないかと見る向きもあります。
非常に早いスピードでキャッシュレス化が進み、ATMの撤去などが進むと、デジタル化についていけない弱者が取り残されることも、他国の例からも容易に想像できます。
日経ビジネスで平井卓也前IT・科学技術担当大臣はキャッシュレス化についてこのように述べています。
「2025年までに40%、その後は80%まで目指すとしているが、果たしてこういう社会を国民が求めているかどうかをもう一度立ち止まって考える必要がある」。
キャッシュレス化が進んでいくことは間違いありませんが、レジ周り機器も今後の展開を見据えて賢い選択をしていく必要があることは間違いないようです。
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